Raed in the Japanese Language; originally Raed in the Middle
Sunday, August 15, 2004
再度,Khalidさんのウェブログより
Raedさんの「あと10日」は,少なくとも「あと15日」の意味だったようですが,弟のKhalidさんがアクティヴなので,再びKhalidさんのウェブログから。
Faizaさんが大変な目に・・・昨日Faizaさんのウェブログを見たとき更新されてたのはアラビア語の記事だったので何が書かれてるのか読めなかったのですが(今も同じ:英語への翻訳待ちの段階か),よもやこんなことが起きていたとは・・・。
http://secretsinbaghdad.blogspot.com/
Saturday, August 14, 2004
・・・略・・・
ここ数日は電気と水道が劇的に改善されている。嬉しかった。ただし,嬉しかったのは,アラウィの政府がサダムのやり方を踏襲しつつあることがわかるまでの話だった。アラウィの政府は,ナジャフだけでなく,バグダードのサドルシティなどのシーア派地域に,集団懲罰を加えている。【訳注:シーア派地域への電気や水道をカットしているのでしょう。】だからうちの方には水や電気がたくさん回ってくるようになったってわけだ。
Riverbendがブログを再開したので,彼女のサイトを見てみてください。
あと,個人的なことなのですが,うちの母が武装したハイジャッカーに出くわしました。幸いにも無事です。神よ感謝します,彼らは母を殺さなかった。母の車と財布と携帯電話と現金とあとほかにいくつかの物を取っていっただけです。事件があったのはおとといですが,うちの母は大丈夫,精神的にもショックから立ち直って,通常の生活に戻りつつあります。
母は,車から出てくる男たちがMP5マシンガン【訳注:参考】を持っているのに気付いて,暗殺しに来たんじゃないかと思ったそうです。(母は女性団体を通じて反占領活動に関わるようになっています。)なので,彼らの目的が車「だけ」だとわかったときはほっとしたとのこと。
hamdilla assalama mom! (thank God for your safety) :))
政府はイラク警察をバグダードから引き上げてしまった。ナジャフのシーア派と戦うために警察が必要だから。そのためにバグダードは犯罪者たちがやりたい放題になってしまってます。
僕たちが警察署に着いて,警察に何があったのかを告げると,警察官のひとりが僕の手に何かを握らせました。車のキーでした。その警察官は僕に,あなたがたの車を警察が見つけるまでは私の個人用の車を使いなさい,と200万回も言うのです。僕がどんなに断ってもそうしろそうしろと言うばかり。僕は彼に何度も感謝して,でももちろん彼の車を使ったりはしませんでした。だって,彼の車までハイジャックされないっていう保証はない。
でもイラクの人間のこのまごころ,こんなこと,イラク以外のどこかにあります?
さて,父が昨日仕事の出張でヨルダンへ行ってしまったので,今は僕が家長の役。家のあちこちに手持ちの武器(として使えるもの)を配備して,うちを襲撃するプランとしてあり得るものに対応するシナリオを想定し,反撃するプランを立てました。というのは,ハイジャッカーは母の財布を取っていったんですが,そこにはIDカードや名刺が入れてあって,さらに米ドルで現金が入ってたんですね。この米ドルってのが最悪で,米ドルを持ってる人なら家にはもっとたくさんあるだろうと思われちゃうわけです。僕らとしては,同じ連中が襲ってくるだろうと考えてます。さらに,家族のひとりを誘拐しようとするかもしれない。現在では誘拐が他人からお金を取るのには一番いい方法になってるわけだし。神が私たちをお守りくださる。僕たちは神を信じている。僕たちのために祈ってください。
こんな具合に治安がめちゃくちゃ。あなたの家に入った泥棒を撃った場合,その泥棒が家の中にいるときに脚を撃てば,そいつの部族がやってきて金を要求するだろうし,金を出さなければ殺すとか家をぶっ壊すとかいうことになるでしょう。あるいは時には金銭は要求せず,単にやり返すだけかもしれない。というわけで,僕にはっきりとしているのは,攻撃を受けた場合は撃ち殺せ,情け容赦なく頭に撃ちこめ,ってこと。誰かがあなたに対してやりかえす理由ができてしまったら,だれも,だれひとりとして,自分たちのメンバーも守れないあのアホな政府も,警察も,軍隊も,だれひとりとしてあなたを守ってはくれない。彼らはいい装備で武装したやくざ者で一帯を支配している,僕たちはこんな状況に生きているんです。僕のような極めて平和的な人間でも,家族を守るために情け容赦なく殺すことができる。
殺す?
「殺す」なんてもう恐ろしいことばじゃなくなった。僕らは何千何万という死人を見てきた。バラバラになった人間を,そこらじゅうに散乱した腕や脚を,地面にくまなく広がった血を見てきた。そこには常にアメリカの機械や戦車やヘリコプターの音がしていた。
あなたにとって,死とは何ですか? よい香りをつけた棺の中に横たわる晴れの衣装を着た綺麗なご遺体ですか? ブーーー,残念。もう1回考えてください。死ってのが実際どんなものか見たいですか? 死ってのにいとも簡単に起きてもらいたいですか? アメリカン・クラブには入らないでください。入らなければ死なんていくらでも見られます……
僕の言う通りだからね。
me*
posted by khalid jarrar # 3:45 AM
*translated by: nofrills, 15 August, 2004
*訳注:
本当に蛇足ですが,最後の方は「皮肉」です。私の日本語のせいでそれが読み取れないといけないので,念の為に付け加えておきます。
Monday, August 09, 2004
引き続き,Khalid Jarrarさん(Raedさんの弟,バグダード在住)のウェブログ,tell me a secretより,アラウィ首相の記者会見についての記述を日本語で紹介します。(ご本人の許諾済み。)
tell me a secret
Sunday, August 08, 2004
昨日のアラウィの記者会見をみなさんが見ることができればいいのにと心から思います。みなさんがアラビア語ができれば,この男がいかに薄汚い傲慢なファシストであるかがわかるのに,と本気で思います。この男はかつてバアス党員であったばかりでなく(そうなんですよ,信じられないかもしれないけどアラウィはバアス党員だったんです),この男はサダム時代に拷問のための器具を最初に輸入したという話ばかりでなく,この男はかつてCIAの暗殺ユニットで仕事をしていたという話ばかりではなく,(確かに噂ではあるのですが,でもアラビア語では,火のないところに煙は立たないと言います)この男はアメリカの戦車に乗りこんでイラクに入ったという事実ばかりでなく,この男は占領者によって任命されたという事実ばかりでなく,この人物がいかなる人物なのか,昨日の記者会見を見ればわかったはずなんです。
ちょっとだけ,どんなものだったのか,ここに書いておきます。
記者:首相,現在行なわれている作戦と,イラクの一般市民を殺していること,アル=ダリ氏の逮捕(アル=ダリとは,スンナ派のコミュニティ・リーダーの息子です)【訳注:PEACE ONの相澤さんのウェブログを参照】,そしてアル=マハディ軍の抵抗のために失敗したアル=サドル逮捕の試み,こういったことは,あなたの政府の承認のもとで起こっているのでしょうか?
アラウィ:イラクの一般市民? どのイラク市民のことですか? 私たちがイラク政府です。私たちがイラクの市民です。あなたが言っているのは反乱者じゃないですか。あなたの質問はイノセントな質問ではない,悪い意図がある質問です。それと,今あなたがおっしゃった人物は誰でしたっけ?
記者:アル=ダリ氏です。
アラウィはそんな人は知らないという振りをするが,アル=ダリ氏はスンナ派コミュニティの中では最も重要な人物のひとりだ。彼はレバノンの放送会社のLBCとのインタビューにも出ていて,そこでスンナ派のコミュニティは,アラウィの政府が作ろうとしている,国民会議とやらには参加しないということを説明した。その数時間語にアル=ダリ氏は逮捕された。
記者は繰り返して:アル=ダリ氏ですよ,スンナ派コミュニティのリーダーの息子の。
アラウィは困ったなという表情をして,早口で答える:彼は釈放されました。(さてこれで,少なくともアラウィはアル=ダリ氏を知ってるらしい。よくできました。)次の質問は。
#訳注:アル=ダリ氏の釈放についてはPEACE ONの相澤さんのウェブログを参照。
イラク人記者:プレジデント(首相のことを「プレジデント」と呼ぶことはよくあることだ),アル=ナジャフの市長が,この2日間で400人が殺されたと言っていますが,本当ですか?
アラウィは記者を睨みつける:記者会見が始まってから,きみはどこにいたのかね? 私の話を聞いていなかったのか? 集中してなかったのか? 私が既に述べたことを繰り返してみなさい,さっきそれについて私が言ったことを聞いていたのか? 私が何て言ったか,あなた言ってみなさい。
記者:内務大臣はその件についての情報を持っていないとおっしゃいました。そして内務大臣が情報を得たときに内務大臣があなたに知らせると。
アラウィ:ということはわかっているんじゃないか。
記者は震えながら:しかしプレジデント,市長は……
アラウィ:情報が入ったら伝える。次の質問。
というわけで記者会見は続き,アラウィは記者たちに対して極めて無礼だった。アラウィはサダムを思い出させる。彼がイラク市民であり,他の全員はやくざ者である,と。
僕はアラウィを見ててヌーリ・イル・サイード(Noori il Saeed:表記が違うかもしれません)を思い出した。英国の占領で任命されたイラクの首相のことを。学校の歴史の教科書で習ったことを。あのとき僕たちは,占領とは歴史の書物で読むものだ,遠い昔に起きたことだ,国際法と国際社会がある現在では起きないことだ,と思っていた。いずれにせよ,話を元に戻すと,僕はヌーリ・イル・サイードを思い出したのだ。アラウィと同じようにふるまっていた人物,アラウィが米国の工作員と呼ばれているのと同様に英国の工作員と呼ばれていた人物を。この人がどうなったか? 群集が彼を捕えるとすぐに何日にもわたって市内を引き回し,昔も今もその名を口にされるたびにあんな奴は地獄へ落ちればいいと言われている。アラウィは教訓を学んでいない。おそらくアラウィは,過去の世紀においては自分のような人物にはそういうことが起こったものだけれども,今では起こらないと考えているのだろう。さて,どうなることやら……。
me*
posted by khalid jarrar # 2:34 AM
*translated by: nofrills, 8 August, 2004
Raedさんが論文執筆などでウェブログをお休みしていので,Raedさんの弟でバグダード在住のKhalid Jarrarさんのウェブログ,tell me a secretから,8月7日の記事を日本語にしてご紹介します。(ご本人の許諾済み。)
tell me a secret
Saturday, August 07, 2004
イラクは血を流している。僕のハートも血を流している。
今イラクで起きていることを説明するには2つのやり方がある。
1つ目は,アラウィ=アメリカ流。「我々はこの国を掃除しているのだ,やくざ者を取り除いているのだ」と。
僕はこれはアメリカの人にはずっと信じやすいんじゃないかと思う。というのは,これなら人々の良心は,この2日間で500人のイラク人が殺され,数千人が負傷したっていうことを気にかけることはないから。
もう1つのやり方は,こんな感じ。
「イラクで今起きていることは,サダムの時代に起きたこととそっくりだ。」
行動:スンナ派は占領は望んでいない。
アラウィ=アメリカ流の反応:やつらはやくざ者だ,ファルージャを殲滅せよ……「やつらを取り除け」「我々の国を掃除しよう」。
行動:何千何万というシーア派は,サドル師支持者たちは,そしてそれ以外のシーア派も,占領は望んでいない。
アラウィ=アメリカ流の反応:やくざ,やくざ,やくざものどもめが,全部殺せ。子どもを殺せ,そうすれば将来問題を起こすこともない。女を殺せ,そうすればやくざ者が生まれることもない。
同じポリシーで,自分たちの側にいない者は誰であれ犯罪者でありやくざ者であり野蛮人であり,そんな者は殺されなければならず,そうでなければ「昨日アメリカの軍警察のひとりがアブ・グレイブ刑務所と述べた」地獄へと送られなければならない。
サダムがやってたこととまるっきり同じだ。新しい政府も昔の政府もほんとにまったく同じで,自分たちの利益のことしか頭にない。邪魔になる人間は誰であれ殺す。
ただひとつ,重要な違いといえば,アラウィ=アメリカの政府はエレガントなスーツを着て,英語が上手だってことだけだ。
僕たちはカオスの中に暮らしている。そこでは,何日かの間に何人のイラク人が連合軍〔原文ママ〕によって殺されていくか,誰にもわからない。でも僕がはっきりとわかってることがひとつある。それは,彼らはできる限りたくさん殺すということ。そしていつものように,世界はそれをテレビで見て,何人かの記者はそれをドキュメンタリーに仕立ててメディア・ネットワークに売って金を儲けてはいいっちょあがり,そして人殺しを終えた後で彼らはこう言うんだ,「反乱は押さえこんだ,あなたたちは再び『解放された』のだ,正義万歳!」と。
この戦争を支持した人ひとりひとりが,血の一滴一滴に対し,責任がある。殺された,あるいはこの先に殺される息子と母親ひとりひとり,妻と夫ひとりひとりに対し,責任がある。この戦争を支持した人,あるいはそれに関わっていた人全員が,血と涙に対し責任がある。歴史の前で,そして神の御前で責任を負うことになる。
どうしてそんなこと気にするの? あの人たちはならず者で反乱軍でしょ――って言いたいんじゃないですか,そこのあなた。
ホワイトハウスの中にいるエレガントなスーツのひとりが,あるいは(バグダードの)グリーンゾーンの臭いシェルターの中にいるエレガントなスーツのひとりが,彼らはこの国を暴力で支配することはできないのだと気付かない限りは,サダムの轍を踏んではならないのだと気付かない限りは,イラク人を殺すのではなく彼らが何を望んでいるのかに耳を傾けなければならないのだと気付かない限りは,この国は決して二度と立ち上がることはない。
でも神さまは見ている。最も偉大なる神,あまねく慈悲深き神。神は真実を知っている。そのうちにわかる。行動は結果によって測られると言う通りだ。この先どうなるかしっかり見よう。この占領の結果がどんなことになるか,そしてこの政府,それはやがて倒れるだろう。そのときあなたは僕の書いてたことを思い出すんだ。でもそれまで,僕たちは引き続き何百何万の命を失い続ける。そしてこの戦争を支持し,あるいは関わった人々はみな,歴史の前で,永遠に,神の御前で,失われる命に対して責任がある。
me*
posted by khalid jarrar # 12:51 AM
【日本語化担当者メモ】
Khalidさんはご自身のことを「宗教心が篤い」と言っています。一方お兄さんのRaedさんはしつこいくらい「僕は世俗主義で左派のムスリム」と書いてます。Jarrar一家のメンバーは宗派もばらばら(スンナ派とシーア派がいるとの説明がRaedさんのウェブログにあります)のようですが,どのくらい宗教的かもそれぞれで異なっているようです。
*translated by: nofrills, 8 August 2004