<$BlogRSDURL$>

 

logo
Raed in the Japanese Language; originally Raed in the Middle
Thursday, February 03, 2005
 
2005年2月1日(火)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Tuesday, February 01, 2005

お人形さん!!




へへへ。
:*)
囚人を解放せよ,さもなくば我々はお前の人形を斬首する

Posted by: Raed Jarrar / 10:26 PM
*translated by: nofrills, 3 February 2005

*訳注
う~む,これは……APが配信した記事ですが,APの記者さんが引っかかったんですね。。。以下,画像で示します。

APが配信した「米兵拘束の声明」の記事(ポータルのmywayより):


Google News (UK)で検索した上位2件:


Google Newsで出てきたヘッドラインをクリックすると……:




この「米軍兵士」の人形は,米国のメーカーが製造した超リアルなアクションフィギュアで,クウェートの米軍基地の売店などで売られていたそうです。(既に製造中止だそうですが。)

さらに,Raedさんとこのコメント欄には
hay Raed look at the writing in the back it is drawn not written the whole thing is a hoax from somebody that doesn't read or write in Arabic!!!
(後ろにある幕のアラビア語がでたらめだ,という内容。コメントを投稿したのはこちらの方。)

数ヶ月前になりますが,「斬首ビデオ」が米国内で撮影された嘘八百だったということもありました。

 
2005年2月1日(火)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Tuesday, February 01, 2005

ヴェトナムとエルサルバドル
偽物の選挙は,イラクのほかにも,ヴェトナム戦争の間とエルサルバドル(エル・サルヴァドル)でもあったということ,ご存知でしょうか。

南ヴェトナムでの選挙は,グエン・ヴァン・チュー政府に対するヴェトナム人の傾倒を加速させるという結果にはならなかった。また,1984年にエルサルバドルでホセ・ナポレオン・ドゥアルテを大統領として選出した選挙は,エルサルバドルの左派の戦闘意欲を奪いはしなかった。ヴェトナムでは「選挙された」政府は外国のスポンサーが軍を撤退させてすぐに崩壊した。エルサルバドルではさらに6年戦争が続き,交渉によって政治的合意が達成されて内戦が終わった。

びっくりしてしまうのはこれだ:

ヴェトナムの投票 米国を勇気付ける結果に
ヴェトコンのテロも何のその,投票率は83パーセントと高官筋

by Peter Grose, Special to the New York Times (9/4/1967: p. 2)

> ワシントン発9月3日――米国政府筋は、投票を妨害しようとするベトコンのテロ・キャンペーンにもかかわらず南ベトナムの大統領選挙に多数の人が投票したことに驚くと同時に感動した。

> サイゴンからの報告によると、585万人の登録有権者の83%が昨日投票を行なった。その多くはベトコンからの報復の危険を犯して投票したものである。

> 民衆の投票規模とベトコンが投票設備を破壊できなかったことが、まだ完全な結果はわかっていないもののこの選挙の初期評価に関する目立った事実である。

Posted by: Raed Jarrar / 10:22 PM
*translated by: nofrills, 3 February 2005

*訳注
●南ヴェトナムの選挙について:
文中,ピーター・グロース記者の1967年のニューヨーク・タイムズ紙の記事(原題はU.S. Encouraged by Vietnam Vote : Officials Cite 83% Turnout Despite Vietcong Terror. by Peter Grose, Special to the New York Times (9/4/1967: p. 2))が,ラフール・マハジャンのウェブログに引用され,そのマハジャンのウェブログが日本語になってます(翻訳は益岡賢さん)。上記文中の同記事の日本語は,益岡さんの訳文を拝借しました。

●エルサルバドル,ドゥアルテ大統領を選出した選挙について:
シンプルな参考資料として,ウェブサイト「ラテンアメリカの政治」さん内,エルサルバドル年表 その2があります。

●Raed blogのこのエントリのコメント欄について:
悪意あるコメントがどかっと寄せられ,コメント投稿者同士の罵り合いになることが多いRaed blogのコメント欄ですが,このエントリのコメント欄は比較的静かで,外部の記事へのリンクがいくつか張られています。スコット・リッターが書いた記事(英ガーディアン掲載),エリオット・ワインバーガーが書いたもの(英ロンドン・レビュー・オヴ・ブックス掲載)などがあります。興味がおありの方はぜひご覧ください。(原文へのリンクをクリックし,少しスクロールダウンすれば読めます。)

 
2005年2月1日(火)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Tuesday, February 01, 2005

刑務所で蜂起


収容されているイラク人4人が死亡,6人が負傷

> 月曜日,治安問題関連で拘束した人々を収容しておくメインの収容施設で暴動/蜂起(uprising)が発生し,米国人警備員が収容者に対し発砲,収容者4人が死亡した。米軍司令部が語った。死亡した4人のほかに6人が負傷している。

> 暴動/蜂起が発生したのは,イラク南部バスラ州,ウンム・クサル近くにあるキャンプ・ブッカ(Camp Bucca)収容施設。同施設の10のコンパウンドのうちの1棟で,禁止されている物品の検査を通常通り行なった後,正午少し過ぎのことだった,と米軍司令部は声明の中で説明している。

> 「暴動(riot)はすぐに他の3棟にも広がり,収容者が石を投げ,居住エリア内部にある物を武器に仕立て上げた。」

> 「およそ45分にわたって危険が増大したが,その後暴力を鎮圧するために,破壊的武器(lethal force)が使用された」と同声明では付け加えている。

> 同声明では,暴動/蜂起は「事態を収拾しようと武器を利用したことと,暴動の最中にキャンプ内の他の収容者が暴力を用いたことの双方が原因となった」と述べている。

ちょっと待った。
自由とかデモクラシーとかを悪く思わないように。

> 「暴動の原因と,破壊的武器の使用は,指令系統と米軍の犯罪捜査部(U.S. Army's Criminal Investigations Division)によって,現在調査されている。これは収容者が死亡した場合にはいつでも取られる通常の対応である」と声明では付け加えている。

彼らはただ,歴史的選挙をお祝いしていただけかもしれない。
彼らはただ,喜びと自由に絶叫していただけかもしれない。
彼らはただ,バグダードにブッシュの銅像が立てられることでうれしかっただけかも……。

Posted by: Raed Jarrar / 2:07 AM
*translated by: nofrills, 2 February 2005

訳注:
BBC記事→http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/4224665.stm

 
2005年2月1日(火)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Tuesday, February 01, 2005

オーストラリアの方々へのオープンレター
まず,一般的にイラク人はオーストラリアに敬意を抱いているということをわかっておいていただきたいと思います。僕にはオーストラリアに住んでいる友人や親族がたくさんいて,彼らはオーストラリアが大好きです。父は昨年オーストラリアに行きましたが,オーストラリアについてとてもよい印象を抱いてます。

また,オーストラリアに憎しみや敵対心を抱いているイラク人には,僕はこれまでひとりとして会ったことはありません。オーストラリアの占領軍に対する最近の攻撃が,どれもこれも,僕たちの国と国の間の関係の歴史の黒い1ページを始めていますが,僕たちのほとんどはこういった攻撃が起こらなければよかったのにと思っています。オーストラリア軍がこの占領に参加していなければよかったのに,と。そして,僕たちの国と国との関係がこれらの暴力的な出来事で始められなければよかったのに,と。次の写真は,10日前にバグダードでオーストラリア軍が宿舎としているバラックに自爆の自動車爆弾の攻撃があったときに撮られたものです。オーストラリア軍が標的とされているのは,占領軍の一部となっているからです。



僕はバグダードで多くのオーストラリア軍兵士に会いました。現地のオーストラリア大使館の近くにあるアル=ハムラ・ホテルのプールによく泳ぎに行っていたのです。僕が会った兵士たちはみな,とてもフレンドリーでよい人たちでした。それでも,彼らがよい人たちかどうかに関わらず,彼らは占領軍の一員であり,イラクで起きているこの大規模な殺戮に参加しているのです。

昨日,イラクで初めてオーストラリア兵士に死者が出ました。亡くなった方のご家族・ご友人にお悔やみ申し上げたいと思います。そして,彼らの息子を,そして私たちの息子を本当に殺したのは占領政府であるということはわかっておられるだろうと願っています。みなさまには,あなた方の軍をイラクから撤退させるために,あなた方の政府にもっと圧力をかけていただけるようお願い申し上げたく思います。イラクの人々との問題はブッシュ政権に担当させ,解決させてください。それはブッシュ政権がやるべきことなのです。イラクに対するブッシュ政権の戦争を正当化するための,偽りの国際的という隠れ蓑を,ブッシュ政権に与えないでください。あなた方の軍がイラクにいることは,政治的なことにすぎません。米国政府の,誤った外交政策を支持するためだけのものです。人種差別的な「米帝国のための戦争」を支持したいなどと思う人はいません。

軍にいるあなた方の息子さんや娘さんをイラクで死なせないでください。軍に属していない息子さんや娘さんがイラクで殺されるようなことにしないでください。あなた方の政府をこの大規模な殺戮に参加させて,あなた方と僕たちとの間に暴力と憎悪のおそろしい歴史を始めないでください。

Posted by: Raed Jarrar / 1:22 AM
*translated by: nofrills, 2 February 2005

Tuesday, February 01, 2005
 
2005年2月1日(火)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Tuesday, February 01, 2005

「これまでで最悪の犠牲」


この数ヶ月というもの,こういう声明を何度耳にしただろう?

モスルのテントで爆発物を持ったイラク人攻撃者が自爆して数十人の米兵を殺したとき,ファルージャの西で米軍ヘリが撃ち落されて,米海兵隊員数十人が殺されたとき,そして,英軍のC130輸送機がバグダードの北で撃ち落されて,人数は明らかになっていないけれども占領軍が殺された。

このビデオには,イラクのレジスタンス(Iraqi national resistance)が対空ミサイルを何発か発射して,C130が空中で爆発しているのが映っている。この攻撃はオーストラリアの兵士もひとり殺した。イラクで殺された最初のオーストラリアの軍人。

これはオーストラリア政府にとっても「これまでで最悪の犠牲」だ。

占領軍にはできる限り早期にイラクから去ってもらいたいと僕は願っている。この流血の惨事が早く終わってくれることを願っている。ブッシュ政権が,自分たちがイラクでおかした過ちを正すよう努力してくれることを願っている。でも,小ブッシュには,殺された何千単位のイラク人と米兵を元通りに戻すことはできない。

Posted by: Raed Jarrar / 1:21 AM

*追記
英軍ハーキュリーズ(C130輸送機)撃墜についてのBBC記事。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/4221521.stm
記事の概略は私の個人ウェブログに上げてあります。

 
2005年1月31日(月)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Monday, January 31, 2005

噂と嘘とスーパースター


イラクの独裁政権の時代にあった「選挙」のことを僕は覚えている。あのころも人々は数百万単位で投票に行っていた。選挙前にいろいろな噂が出て,人々に恐怖心を抱かせていた。それは,現在,選挙前のいろいろな噂のせいで人々が恐怖心を抱かされているのと同じ。当時,投票に行かない者は誰であれ処罰されるとか,投票用紙には秘密の番号があって,その番号から政府は誰がノーと言ったのかを突き止められるのだとか,言われていた。当時,人々はそういったことを信じていた。そして,そういった噂が,イラク人が何百人単位で独裁者にイエスと言ったこと理由として大きい。投票するということを信じていたから投票に出かけた人もいたことは確かだ。あるいはほかの理由で投票した人もいた。けれども,人々は票を投じてから「喜びにむせんで泣いて」はいなかったということは確かだ。【訳注:Raedさんのこの前のエントリに,「選挙は大成功だ」という人々からコメントスクラムが寄せられているが,その中に「初めての選挙」で「票を投じた人が,喜びにむせんで泣いている」というようなものが複数ある。←コメント欄はまともに読む気がしないので,私が誤読している可能性もあります。】

マリー・アントワネットのあの有名な言葉のような,21世紀の有名なあの一言をどうぞ。

【訳注:アントワネット云々というのは,もちろん「パンがないのならお菓子を食べればよろしくってよ(Let them eat cake)」ですが,リンク先は“アントワネット伝説の謎を解く”風です。本筋から離れるので日本語にはしません。】

アラウ(ィ):大統領,数万の民が死に瀕しており,そうでない者には水も電気もありません。石油製品も欠乏しております。生活状況はまことにひどく,数百万の民が国を去りつつあります……
小ブッシュ:選挙を食べさせておけばよい(let them eat elections)。

ブッシュやアラウ(ィ)やそのほかのお猿さんたちが,欣喜雀躍して彼らの偽物選挙をお祝いしたいのなら,彼らにはもっと考えてもらわないといけない。誰もお祝いなどしないであろう次のステップについて。

この選挙がロマンチックに仕立て上げられているその方法に,僕は心底びっくりしている。あたかも,イラク人というのは自分たちの生活に起きている悲劇なんかまるっきり気にせず,投票することだけしか頭にない新種の生き物なのである,といわんばかり。あたかも,イラク人が,ブッシュ政権が投票し,投票し,投票し,喜びのあまりむせび泣くように創造した,プログラムされた通りにしか動かない機械であるかのようだ。

今の選挙というのが,根本的に,戦前の選挙と異なっているのだと考えている人がいるとしたら,まったくの間違い。当時イラク人にはひとつの偽物の選択肢があったかもしれないが,現在のイラク人には100の偽物の選択肢がある。

現在の選挙は,地獄の扉を開くだろう。ブッシュ政権にはイラクから撤退する意思も,自分たちが始めた不法な戦争に対する賠償を支払う気もまるでないということが,誰の目にもわかるようになったら,内紛への扉を開き,占領軍への攻撃を増加させるだろう。

イラクがいつか本物の選挙,主権国家としての選挙を行なうことができれば,と僕は心底願っている。

何日か前に書いたように【→日本語化したもの】,イラクにはロードマップが必要。本物の選挙を行なう前に,選挙前のロードマップが必要。選挙とは,紙に名前を書いて箱に放り込むことではない。大規模にオーガナイズされた社会的な,またインフラ面でのキャパシティが必要。イラクには,現在の危機を終わらせるための展望のある計画が必要。昨日の選挙は事態をますます混乱させ,将来において本物の選挙が行なわれる可能性をますます低くしてしまう。イラクには,選挙を行なう前に,3つの大きなことが必要だ。

1:外国軍の駐留および外国の政治的プレゼンスを終わらせること,すなわち占領の終結。
2:違法な戦争によって生じた破壊を修復し,補償を支払うこと。
3:国内の暴力のサイクルを止めること。

これら3点が達成されてからはじめて,真に建設的な選挙について語ることができるようになる。

3点だが,簡単に達成できるものではない。個人的には実は,このプランの最初のステップは,イラク戦争は不法なものであったと認めることだと思っている。占領している側からの公的な謝罪と不法な戦争と自ら認め語ることが,本当のターニングポイントになるだろう。占領軍の撤退のスケジュールも,できるかぎり早く発表されなければならない。また,この先数年の治安状況については,各国からの軍がセキュリティ・ギャップを埋めることができるだろう。ただし,これも同様に,イラクからの撤退期限を明確に示したスケジュールが必要だ。

補償はイラク人ひとりひとりに支払われなければならない(金額は数万ドルから数十万ドルまで各種各様)。これは1990年にイラクが不法にクウェートに侵略した後にクウェート人に支払われたのと同じだ。また,国としてのイラクにも補償が支払われなければならない(こちらは数千億ドルだろう)。これはイラクがイラク政府の不法な行ないゆえに補償を支払ったのと同じだ。

国内での暴力のサイクルは,占領軍の撤退と経済状況の改善に伴って,徐々に軽減されるだろう。イラク人は自分たちの問題は自分たちで解決することができる。外国による占領に手伝ってもらう必要はない。

本日のスーパースター
本日はスーパースターがお2人

まずは,アメリカから次のようなメールを送ってくれた賢い読者さん。
「補償については,米国人としてまったく賛成しますよ,もしあなたが,既に私たちが費やした1050億ドルと,ブッシュがさらに別に要求している800億ドルを勘定に入れているのであれば。あなたがたが復興するのを支援するために行ったアメリカ人請負業者の損失は勘定に入れずにおきましょう。」

いずれにせよこの読者さんにはお返事はしてあります。小ブッシュが僕の国を破壊し親戚を殺すために費やしたお金には,本当に感謝しています。この読者さんには後でお花をお送りしたいと思います。

それから,真のイラクのヒーロー。バグダードの新しい知事のアリ・ファデルさん,ブッシュたんを讃えるためにバグダードに銅像を立てたいって
これってすごくない?
これには僕も喜びのあまりむせび泣いてしまいます。

Posted by: Raed Jarrar / 7:52 PM
*translated by: nofrills, 1 February 2005

*コメント欄より(本文へのフィードバックになっているもの)
Statue for Bush is a GREAT idea.
Something to topple when the Americans are running in fear. It will be a historic moment.

# posted by Anonymous : 9:03 PM


(ブッシュの銅像なら,米国が逃げ出すときに引きずり倒すのに好適だしね,という内容。)

 
2005年1月30日(日)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Sunday, January 30, 2005

食べる物のために投票を

いきなりですが訳注:
日本語化するにあたり,まず,Raedさんが下記記事で最初にリンクしているワシントン・ポストの記事を少しだけ見ておいていただきたいと思いますので,訳者の判断でそれをRaedさんの記事の前に置くことにします。
In Iraqi Vote, the Writing Isn't on the Wall
There is a sense among some in Baghdad that the United States wants the new parliament to choose Allawi, the incumbent, as prime minister. If the Americans want it, the conversation goes, so it will be. This reflects the deep vein of conspiracy theories that runs through Baghdad life these days -- from a rumor that the Jordanian militant Abu Musab Zarqawi, blamed for some of Iraq's most spectacular carnage, is an American fabrication, to a rumor voiced by Abed that Iraqis who don't vote will have their monthly food rations taken away.

"Maybe it's not correct," he said, "but it's what people are saying."


バグダードの人々の中には,米国は新たな議会に現在のアラウィを首相に選出してもらいたがっているのだと感じている人々もいる。もしもアメリカがそれを望んでいるのであれば,と会話は続く――そうなるんだろう。これは,最近のバグダードの生活に走っている陰謀論の深い根を反映している。アブ・ムサブ・アル=ザルカウィ【ザルカウィについての記述部分省略】はアメリカの作り事であるとか,アビド【引用した部分の前に出てくる,取材に応じたイラク人】が言っていた噂,投票しないイラク人は毎月の食糧配給が受けられなくなるという噂が,日々ささやかれているのだ。

「本当ではないかもしれないけれど」とアビドは言う。「でもそれが,みんなが言ってることなのだ。」


食糧配給云々は,いわゆる「デマ」かもしれません。しかしこういう場合に人々の行動を決める上で重要になるのは,それが本当かどうかより,むしろ,みんながそれを信じているということじゃないかと――Raedさんもそう書いています。

だから,「食べる物のために投票を Vote for Food」というこのエントリのタイトルは,「事実として,投票しない者には食糧配給をしないというお達しがあった」ということではなく,「投票しない者には食糧配給をしないという噂が流れて,投票しないでおこうと思っていた人たちも投票所に行った」ということと解釈してください。

では,以下がRaedさんの記事です。



卑劣で腐りきったブッシュ政権は,汚いアラウ(ィ)政権と共同で,イラク人に投票を強要している。アラウ(ィ)ら傀儡どもは,投票しないイラク人は毎月の食糧配給を受けられないと脅している。

ブッシュ・ギャングは,目的に達するためなら何だってやりかねない。

どんなことだって

投票に行かなければ,政府は毎月の食糧配給をカットするということが,イラクじゅうでよく知られている。みんながこのことを話していて,みんなが信じている!!! ひどい状況にありめちゃくちゃにされたイラク人たちが何百万人と家から引っ張り出されて,爆発やら銃撃やらの中を選挙センターに行かされた大きな理由のひとつが,これなのだ。

彼らは選挙のことなどまったく気にかけていない。食べる物がほしいのだ。何百万というイラク人は,この噂が本当なのかでたらめなのかを調べることなどできる可能性もない。これは生き残れるかどうかという問題なのだ。毎月の食糧配給を受けるためには命の危険も辞さない。

シスタニの命令ですら,人々を家から出させて投票に行かせるためには十分ではない。彼らはブッシュ流の自由などほしくないのだ。

数日前,バグダードで,弟のハリードの友人が,ハリードに「行くだけ行って白票を投じてくるよ。家族の食糧配給がほしいから」と言った。今日は2度,バグダードのハリードに電話をして,どんな状況かを確認したが,僕が(アンマンで)BBCで聞いたのと同じことを弟は言っていた――2分に1度爆発があると!

ブッシュ・ギャングは,イラクでのしょうもないお芝居を完成させようと,長きにわたって欺瞞を積み重ねてきたその上にさらに嘘を積み上げようと必死である。

そして,「イラク政府」は紛らわしく誤った数字を発表している。全有権者に対する投票者の割合を発表するではなく,登録した有権者に対する投票者の割合を発表している!!!!

たとえば,ヨルダンで名前を登録したイラク人の数は,ヨルダン在住の全有権者の20パーセントに満たなかった。だから,登録した有権者の90パーセントが投票した場合,結局は投票したのは総数の18パーセントということになる……90パーセントなんてのは,人々に告げられるべき真正な数字ではない!!!!!

嘘ばっか,嘘ばっか,嘘ばっか!!!!!!!

イラク国内で発表される数字は全部うそだ。たとえば,ティクリート行政区の登録した有権者数は,全住民合計数十万人のうち2000人であり,今日1000人が投票したとして,それは投票率が50パーセントなどということにはまったくならない

嘘ばっか,嘘ばっか,嘘ばっか!!!!!!!

イラクの偽物の政府は,今日イラク人の72パーセントが投票したと発表した。後に政府は800万人が投票したと発表したが,ということは,投票したのはおよそ56パーセントということになる。というのは,イラク国内にいる有権者の総数は1427万人だからだ。

原始的で弱体のイラク政府が,今日どれだけの人が投票に出かけたかをこんなに早く把握するなどということはありえない。これらの数字は,大げさな推測に過ぎない。

彼らはあまりにおばかさんなので計算間違いをする。

国外にいるイラク人の総数は,400万を超えている。イラク人の56パーセントが18歳以上である。【訳注:イラクで選挙権を有するのは18歳以上。】ということは,イラク国外でだいたい250万人のイラク人が有権者ということになる。そのうち投票したのは,25万人にも満たない。

驚くべきことに,単純な計算をすれば,イラク国内および国内の有権者の総数は,1675万人。そして実際に投票した人の数は,825万人にも満たない!!!!!

投票率は50パーセントに満たない。

ということは,これは法に適っていない選挙ということになる。

投票率は,選挙を法に適ったものにするには十分ではない!!!【訳注:すぐ上のリンク,http://www.globalpolicy.org/掲載の記事(元はシドニー・モーニング・ヘラルド)のタイトルのwon't beをis notに書きかえたもの。】

こんなに嘘八百並べても,人々の生存の手段を脅かしても,うまく行ったようには見えない。
:*)

アグリー・コンディ(ugly-condi:コンドリーザ・ライスのこと)がありとあらゆる放送局に「イラクの投票は予想より順調」と高らかに語っても,小ブッシュがイラクの投票のことを「圧倒的成功」と賞賛しても,世界はこの二人の,数学的に不自由な嘘つきが,自分が何のことを話しているのかをわかってないというそのさまを見なければならない。

今日の選挙は,イラクに対するブッシュの長い戦争の恥ずかしい1ページにすぎない。この選挙もまた,ブッシュと占領軍が近いうちに代償を支払うことになる過ちのひとつだったのだ。

Posted by: Raed Jarrar / 11:59 PM
*translated by: nofrills, 1 February 2005

*訳注:参考リンクなど
今回の選挙がどのように行なわれたかについて,英語ですが,クリスチャン・サイエンス・モニター紙(US)がQ&A方式でわかりやすくまとめてくれています。
http://www.christiansciencemonitor.com/2005/0128/p10s02-woiq.html

それから,Raedさんのこの記事のコメント欄で,Reiさんという方が,投票率についての報道をまとめてくれているので,それを引いておきます。
I decided to dig up all of the reports that I could find on turnout. When I couldn't find a % of elligible voters for a location, I used the number of voters and assumed that only half of the residents were elligible (the "scaled" percentages)

Ansar province - "up to 10%", "over 15000" (US military). These numbers don't jive with each other, because 15000 is very different from 10%.
* Fallujah: ~7500 out of ~250,000 (3%, scaled=6%?) (same source, disputed as too high by others)
* Ramadi: ~1700 out of ~350,000 (1/2%, scaled=1%?) (same)
* Contradictory number for Ramadi: ~300 (1/10 %, scaled=1/5%?) (poll workers; Dexter Filkins, NYT)

Mosul: with 60% of presincts in, 53,000 were left (NYT). This means about 130k votes cast, in a city of
about 1,739,800 (7.5%, scaled=15%)

Irbil (Kurdish): "60%", surprisingly low ("arab satellite tv", sourced by Juan Cole)
* The Iraqi government says that the Kurdish north as a whole was around 90%, which seems contradictory

Samarra: 1400/200,000 (<1%): US military

Baji: Election officials didn't show up (Dexter Filkins, NYT)

Najaf:
* Turnout "very high" - ~80% (Iraqi government)
* "Free Republic" party complains that the ballots were modified, other relatively minor irregularities

Maysan province: 92% (Iraqi government)

Kerbala: 90% (Iraqi government)

Baghdad: 80% (Iraqi government)
* Rufasa: 65% (Iraqi government)
* Karkh: 95% (Iraqi government)

Electoral commission estimates 57% total in the country

Overseas: 280,303 registered out of 3 million elligible voters; of these, turnout averaged 94%; thus, around 260k out of 3 million voted (~9%). Only 2 million were able to register due to incomplete facilities, so of those who could vote, the number is around 13%.

Misc problems: The whole "ration card" thing

Summary: An incredible turnout in the shia areas, if you can believe the government. Same for the kurdish areas. Almost no turnout at all for the sunni areas. Pretty much what was predicted beforehand.

- Rei

# posted by Anonymous : 7:45 PM


日本語にするのは……ごめんなさい,省略。

Monday, January 31, 2005
 
2005年1月29日(土)の記事
※Raedさんの投稿時間は,おそらく米国の時間だと思います。現地(ヨルダン)では30日の投稿です。(日本から更新状況を確認した上での判断。)

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Saturday, January 29, 2005

地獄の扉にて
米国に拠点を置くゾグビー・インターナショナルの調査によると,スンニ派の82パーセントとシーア派の69パーセントが,「直ちに,もしくは選挙された政府が固まり次第」米軍には撤退してもらいたいと思っている。

選挙というものは,大衆参加すなわちデモクラシーのメカニズムのひとつの,小さな部分だ。そして,デモクラシーそれ自体が,国家(state)という巨大な経済・社会・文化の複合体の小さな部分だ。

今おこなわれている,時期尚早のイラクの選挙は,一大イベントとして,ピークとして,今起きていることとして,マーケティングされている。あたかも,選挙の日の後にはすべてが終わるというかのように! これではまるで,陳腐な恋愛映画だ。恋人同士が結婚してめでたしめでたしで幕引きっていうパターン。

ロマンチックなイラクの選挙は,地獄の扉を開くだろう。南部のシーア派の過半数が「待っている」状態なのだとすれば,彼らは選挙がハイジャックされたら「待ち」の姿勢を解除するだろう。北部のクルド人がイラクからの「独立」を問う「非公式」のレファレンダムを行なえば,北部でもクルド人とアラブ人が「待ち」の姿勢を解除するだろう。政府からスンニ派が完全に閉め出されたら,彼らは引き続き「待ち」の姿勢など取らずにいるだろう。

重要なのは選挙ではない。重要なのはその次に何が起きるかだ。イラクの人々が占領軍にイラクから立ち去ってほしいと言うとき,そしてイラクの14の恒久的軍事基地から立ち去ってほしいと言うときに。シーア派がブシュタニ【←「シスタニ」のこと】に,なぜ占領軍の側に立っているのですかと訊くようになったときに。

今回の選挙は,地獄の扉を開く。

Posted by: Raed Jarrar / 1:17 PM
*translated by: nofrills, 31 January 2005

*追記
Raedさんのところのコメント欄の一番上にポストされていた記事(彼のとこのコメント欄は米国人同士の罵り合いが圧倒的に多いのであまり読んでないんですが):
Iraqi Shi'ite Cleric Urges Election Boycott
「シーア派指導者が選挙ボイコットを呼びかけ」という見出しです。タイムスタンプはSat Jan 29, 3:36 PM ETになってます。

一瞬ムクタダ・サドル師かな?と思ったのですが,そうではなく,「アヤトラ」であるAyatollah Ahmed al-Hassani al-Baghdadi すなわちアハメド・アル=ハッサニ・アル=バグダディ師でした。

...

Baghdadi, one of the few Shi'ite clerics openly to oppose an election that is expected to cement the long-oppressed Shi'ite majority's newfound political power, said a timeline for the withdrawal of U.S. troops and scrapping the interim constitution that embraces federalism should precede a poll.

"I believe these elections will fail as most Iraqis will boycott because of the lack of security and calls for federalism ... I call on my people to boycott the elections," he said in an interview at his home in Najaf.

*snip*

While he has far less influence than Sistani, who is deeply revered among Shi'ites, Baghdadi's rejection of elections reflects the simmering resentment of some Shi'ites for U.S. forces in the country, which face an insurgency led by Sunni militants and Saddam Hussein loyalists.

*snip*

Sadr's movement is not officially running in Sunday's polls, but has not told followers to boycott them, though some plan to do so.

But many of the Sunnis who make up about 20 percent of the population, facing violence and intimidation in their heartland and feeling increasingly marginalized since the U.S.-led war, are leading a boycott.

Baghdadi condemned elections under the gaze of U.S. tanks as a mockery, slammed the cleric-politicians who are running for office and urged Iraqis to unite to expel American forces.

"Resistance will continue even if both Sunnis and Shi'ites go to the polls," he said. "These elections will fail. Elections with lax security, under the interim constitution, have no legitimacy."

"I am a son of Iraq and I call on all Christians and Muslims to expel the Americans from Iraq," he added.


一方,大アヤトラのシスタニ師関連ではこんな話が……ラフール・マハジャンのウェブログより。
http://www.empirenotes.org/january05.html#29jan051
Now, according to the Institute for War and Peace Reporting's reporters in Basra, he has come out openly:

Hayder al-Safi, spokesman for Sistani’s representative in Basra, Ali Abdul-Hakim al-Safi, said on January 28 that Shia leaders are urging people to vote for the United Iraqi Alliance, listed as number 169 on the ballot sheet. "Anyone that votes for List no. 169, I will answer for them before God,” said al-Safi, quoting the words of Sistani. “And anyone who will vote for other lists will answer before God."


I think that's pretty definitive. Vote for 169 or you're damned. Sistani should worry -- he's on track to descend to the level of Pat Robertson and Jerry Falwell.

I'm not sure how much more of this democracy -- in American and in Iraq -- the world can take.


つまり,シスタニ師は「リストの169番に投票しなさい。そうすれば誰であれ神にご報告しておく」ということを言っている,ということですね。それを解釈すれば,「169番に投票しなければ地獄行きだ」と。

Sunday, January 30, 2005
 
2005年1月28日(金)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Friday, January 28, 2005

在外イラク人の登録は総数の1割以下


イラク国外に暮らしているイラク人の総数は,400万を超えている。そう,4,000,000を超えている。そのうち,およそ300万人が選挙権を有する。投票所が設けられている14カ国に暮らすイラク人の合計は200万以上だ。

一方,全世界で選挙登録した人の合計数は,280,303。ということは,イラク国外に住むイラク人有権者のうち1割足らずしか名前を登録していないということになる。

国外での総数がこれだとすれば,国内での数はどうなんだろう。今日弟のハリードに電話をしたが,弟の話では,バグダードはまるで無人地帯だとのこと。近所に歩いて出かけてみたけれども,商店もレストランも1軒も営業していなかったとか!

外に食事にも行かないような状況で,投票に行く人がいるんだろうか?

この選挙は偽りで違法な選挙だ。それにイラクの世論を表すものではまったくない。

Posted by: Raed Jarrar / 10:07 PM
*translated by: nofrills, 30 January 2005

 
2005年1月27日(木)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Thursday, January 27, 2005

早い選挙,いんちき選挙

現在行なわれているイラクの偽物選挙は,ブッシュ政権のイラクでの計画にとっては基礎となる部分だ。この計画は15年前に老ブッシュによって開始され,現在は小ブッシュによって行なわれている。

現在のイラクの危機と占領の本当のルーツは,イラクとイランの戦争【訳注:1980~88年。参考資料】にまでさかのぼることができる。米国政府は,マーティン・インディク(Martin Indyk:経歴)によって明言された,いわゆる「二重封じ込め」戦略("dual-containment" strategy)で,イラン・イラク戦争に賛成。米政権は,情報から武器供与,イラク政府の武器(化学兵器を含む)使用の理由付けにいたるまで,可能な限りあらゆる方法でイラク政府を支持した。そしてあの悲惨な,しかしあまりに利用されすぎ情報操作されたハラブジャでの事件が起きたとき,米政権はそれを行なったのが誰であるかはっきりとわからないと宣言し,また,あれが化学兵器なのかどうかもはっきりしないと述べた。2002年8月のニューヨーク・タイムズ紙の記事で,当時の防衛情報部幹部職員だったウォルター・P・ラング大佐(Col. Walter P. Lang)が,CIAはイランに対して「イラクが敗北しないよう何としてでも確実にしておきたかった」のだと述べている。「イラク軍が戦場でガスを用いることは,戦略上重大な懸念を引き起こすものではなかった」とラング大佐は述べている。ある退役軍人は,ペンタゴンは「イラクがガスを使ったことにはそんなに恐怖を抱かなかった」と述べている。「これもまた人を殺す方法のひとつであるに過ぎない――銃弾であろうがホスゲンであろうが,まったく違いはなかったのだ」。

古い友人が言っていた通り,常に変わらぬ友情を築く相手を持たない政府もある。そういった政府は,常に変わらぬ利害を有するのだ。それはモラルの問題ではない。過去においてモラルの問題であったことはないし,これから先もそうなることはない。

米国政府は,イラク軍が「敗北しない」ことを確実にしようとしていた。そして,イランのシャーが追放された後【訳注:1953年のクーデターで政権を奪取したイランのシャーは親米政策を取り続けたが,79年のイスラム革命で追放された】,イラク政府が新たに湾岸地域の警察となるよう確実にしようとしていた。イラク政府は数十年にわたって米国政府に完全に支持されていた。米国政府は,イラク政府におよそ50億ドルを支援として与え,同盟国には数十億ドル相当の武器弾薬(マスタードガスや神経ガスを作る工場で用いられたと伝えられている技術も含め)をイラク政府に供給するよう奨励した。1994年の米上院議会報告書によれば,米国企業もまたイラクに,炭疽菌,ボツリヌス菌,病原性大腸菌を含む生物材料を供給していた。

こういった支援すべてが,イラクにおいて強大な独裁政権を作り出した。外部からの見えない支援のために,内部からの変革も,あるいは改善すらもできない,国家規模の独裁を。

イラクとイランの戦争が終結し,数百億ドルという負債が残り,イラクの政治的指導者たちは財政面で大きな危機に直面した。それでもまだ強大な軍と米国からの無限の支援のために彼らは力を失っていないと感じていたが,そのときに,小さくて無礼なクウェートという隣国によって圧力をかけられた。原油価格の問題が原因であった。そして彼らは,クウェートを攻撃し占領するという,湾岸地域の現代史における最大の過ちを犯した。米国政府が実際にエイプリル・グラスピー(April Glaspie:1991年湾岸戦争前の駐イラク米国大使,参考)を通じて青信号を出したのであれ,あるいはそうでないのであれ,老ブッシュにとっては自軍を中東に送り自身が湾岸の警察官として振舞うことを開始するためには最良の口実となった。

イラク政府はもはや友人ではなかった。イラク政府はもはや盟友でもなかった。イラクとの物語は,オサマ・ビン=ラディンの場合とは異なる。イラク政府もオサマ・ビン=ラディンも米国政府から盲目的サポートを受けていたというのは事実だ。しかし,オサマ・ビン=ラディンはご主人さまの手を噛もうと決意したのだが,同じ時にそのご主人さまはイラクにいた盟友の首を切って飛ばしたのだ。イラク政府は,湾岸地域を占領するためのスケープゴートだった。

オペレーション・イラク:スケープゴートは,ほぼ14年をかけた。第一のターゲットは,湾岸の豊かな諸国を搾り取ること,そしてイラクを占領し,イラクを湾岸地域における米軍の主要な基地とする機が熟すまで,イラクを徐々に破壊することだった。標的はイラク軍と,政治部門・民生部門両面のイラク政府。1991年,老ブッシュはイラクを占領し破壊することが楽にできる時期ではないと知っていた。老ブッシュは,イラク政府を弱体化したままで保つことが,湾岸地域に駐留を続けイラクをゆっくりと壊していくために最善の策であると知っていた。それゆえ,経済制裁ゲームが開始されたのである。老ブッシュはイラクを占領したくなかったのだと考える人もいるが,誤りである。ただ,適切な時期に行ないたいだけだったのだ。

現在わたしたちが置かれているこの占領は,数十年にわたる計画と実地作業の結果である。占領後イラクの計画は,最善の方法で計画されてはいなかったかもしれないが,概略はずっと以前に決められていたのである。

その国を攻撃し,グローバル資本家の村の一部とするためにパブリックセクターを破壊し,同地域のほかの米国の友人たちを安全にしておくために国軍を破壊し,その国家の政治的指導者を除去して傀儡(例えばカルザイ,アラウィ,アブ=マーゼン【訳注:パレスチナのアッバス議長の別名】など)を据え付ける。わたしたちがそのイラクの政治的指導者たちを好むか好まないかには関係なく,彼らは合法的な国家指導者である。そして,たとえわたしたちが彼らを好まない場合であっても,非合法な外国からの侵略によって彼らを除去すべきであると確信している場合であっても,政府の民生部門を破壊することは,指導者層排除とは関係ない。数十万人ものイラク人が働いている民生部門省庁を破壊することなく政治的指導者層を排除することは,可能であった。これら数十万人のイラク人は,合法的,国家的な政府であり,文民政府であった。

ある国家を攻撃し,その政治的指導者層を除去することは,いかなる国際法および条約においても,不法かつ無効である。ある国家を攻撃し,機能している機構をすべて破壊し,数千数万という人々を殺すことは,決して忘れ去られることのない歴史的ジェノサイドである。ファルージャ(およびそのほかのイラクの都市)で殺され家を追われた数万単位の市民たちと,アウシュヴィッツで殺された数万単位の市民たちとの間には違いはあるが,共通点も多い。

わたし自身,イラクという国家の政府によって影響を被った人間のひとりである。あれらすべての戦争で命を落とした親戚がいる。祖先がイラン出身であったために,イラクとイランの戦争の期間は国境地帯に投げ出された親族もいる。イラク政府の態度をイラク国内で批判したために,個人的にも多くの問題が発生した。イラク政府が違ったものであったならば,わたしの生活の質はもっとよいものであったであろう。わたしも,イラク国内で暮らしている間に政府によって悪い方に影響を受けた何百人という人々のひとりである。それでも,この戦争の前の政府は,国家的(national)で公式な政府であったとわたしは理解している。この国を「解放する」ために起きた違法な戦争の正当な理由となるものは,何もない。わたしはこのスタンスを戦争の前から取っていた。そして,イラクの人々の生活を改善する唯一の方法は,内部からの変革であると信じていた。わたしは経済制裁に反対し,戦争に反対していた。そして今,わたしは占領に反対している。

今回の選挙は,中東におけるブッシュの計画の一部である。イラクにおけるブッシュの計画の……この選挙に参加することは,この計画のありとあらゆる点を,正当なものとしてしまう。二重封じ込めを正当なものとし,最初の戦争【訳注:1991年の湾岸戦争をさす】を正当なものとし,経済制裁を正当なものとしてしまう。そして,占領の戦争を正当なものとし,そのために奪われた数万の命に正当な理由を与えてしまう。この選挙で票を投じることは,すべての殺人に,ブッシュ政権の行なったすべての不法な動きに,正当な理由を与えてしまう。

人々が選挙に行くという事実によって,ブッシュ政権がイラクの人々の代理として為したすべての動きが,正当化されるであろう。この政権は遠路はるばるわたしたちを「解放する」ためにやってきたのではなかったか? わたしたちに選挙権を与えるために,遠路はるばるやってきたのではなかったか? これは,彼らがわたしたちの国を破壊しに来るための虚偽の口実ではないのか? 票を投じる者は誰であれ,不幸なことに,ブッシュの物語を完成させることになる。そして,ブッシュの物語を,あたかもみなが起きたことについて喜んでいますというかのようなものに仕立て上げることになる。

これはスンニ派とかシーア派とかいった問題ではない。これは国家/民族を支持する(pro-national)スタンスを取る人々と,(プラグマティズムの名のもとで)不法で残虐な超大国に屈する人々という問題である。イラク人のスタンスについて見てみよう。サドル【訳注:ムクタダ・サドルのこと】はシーア派の重要な指導者であるが,彼は選挙をボイコットする。アル=パチャーチ【訳注:スンニ派エリート部族の出身。バアス党クーデター前の外交官で,占領イラクでは統治評議会の重要なメンバーだった。参考】は自身を世俗的(非宗教的)指導者として売り込んでいるが,選挙には参加する。スンニ派のなかには選挙に参加する者もおり,一方で多くのシーア派が選挙に参加しない。これは民族間の亀裂の問題というより,国家についてのスタンスの問題である。

イラクに隣接する諸国は選挙を支持しているが,それは小ブッシュがそう言ったからである。イランは,SCIRIの候補者(シスタニに支持されている)が勝利した場合には自分たちが勝者となるたゆえに,選挙を支持している。選挙がよいものであると信じているからという理由で選挙を支持している者は,皆無である。

イラクにはロードマップが必要である。選挙前のロードマップが必要である。選挙は紙に名前を書いて箱に入れることではない。大規模にオーガナイズされた社会的な,またインフラ面でのキャパシティが,選挙には必要である。イラクは現在の危機を終わらせるための展望のある計画を必要としている。

1:外国軍の駐留および外国の政治的プレゼンスを終わらせること,すなわち占領の終結。
2:違法な戦争によって生じた破壊を修復し,補償を支払うこと。
3:国内の暴力のサイクルを止めること。

選挙の話は,これら3点が達成された後になってからできることである。

*3点だが,簡単に達成できるものではない。個人的には実は,このプランの最初のステップは,イラク戦争は不法なものであったと認めることだと思っている。占領している側からの公的な謝罪と不法な戦争と自ら認め語ることが,本当のターニングポイントになるだろう。占領軍の撤退のスケジュールも,できるかぎり早く発表されなければならない。また,この先数年の治安状況については,各国からの軍がセキュリティ・ギャップを埋めることができるだろう。ただし,これも同様に,イラクからの撤退期限を明確に示したスケジュールが必要だ。

*補償はイラク人ひとりひとりに支払われなければならない(金額は数万ドルから数十万ドルまで各種各様)。これは1990年にイラクが不法にクウェートに侵略した後にクウェート人に支払われたのと同じだ。また,国としてのイラクにも補償が支払われなければならない(こちらは数千億ドルだろう)。これはイラクがイラク政府の不法な行ないゆえに補償を支払ったのと同じだ。

*国内での暴力のサイクルは,占領軍の撤退と経済状況の改善に伴って,徐々に軽減されるだろう。イラク人は自分たちの問題は自分たちで解決することができる。外国による占領に手伝ってもらう必要はない。

再選されたとき, ブッシュは選挙に勝ったのだから自分のイラク政策も合法的根拠を与えられたのだと考えたが,まったく当たらない。イラク問題は選挙では焦点となっていなかったし,外交政策を第一に考えていた人たちも,対抗馬のヴィジョンが不鮮明だったために,ブッシュに投票した。イラクで選挙も同じように悪用されるだろう。戦争と占領に,数万の人の死に,自身の文化を持つ国をまるごと破壊したことに合法的根拠を与えるものとされるだろう……。

こういった事実は,ほとんどのイラク人にはわかっている。だからこそ,イラク国外にいる数十万人のイラク人のうち25万人程度しか選挙登録をしていない。イラク人には,これが自分たちを助けるのではなく自分たちを利用するだけの,偽りの選挙だとわかっているのだ。

僕は投票しません……。

Posted by: Raed Jarrar / 3:34 PM


ブッシュ政権に支持されているアラウ(ィ)の選挙ポスターは,アンマンでもあちこちに貼られている。アラウィは自身を「強い」リーダーシップの持ち主として売り込んでいる。僕としては,弱いリーダーシップなど見たくない。

Posted by: Raed Jarrar / 1:36 PM
*translated by: nofrills, 30 January 2005

 
2005年1月27日(木)の記事

http://raedinthemiddle.blogspot.com/

Thursday, January 27, 2005




ニッキとライードの各国めぐりツアーからもう1枚。この写真はUAEのシャルジャー(Sharjah),湖の近くにて。
Posted by: Raed Jarrar / 1:33 PM


ホテルの部屋から見えたドバイ。ホテルとタワーの間のテントは,ドバイのイラク選挙センター。湾岸地域に設けられた投票所は,この選挙センターとアブダビの選挙センターの2箇所だけ。

Posted by: Raed Jarrar / 1:31 PM


ドバイで封鎖されていた唯一の道路。イラク選挙センターに行く道路。

Posted by: Raed Jarrar / 1:28 PM
*translated by: nofrills, 30 January 2005


Powered by Blogger